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個人研究 - Sound Horizon - 今更Elysion考察

仮面の男が妹を犠牲にされた姉に見たもの


Sacrificeに登場する姉に、仮面の男はエルの面影を見出した。
姉のどこにその面影を見たのか述べる前に、まずは話の流れを簡潔に整理する。

例によって特別突飛な内容にはならないと思うが、あしからず。


姉は妹と母親の3人で暮らしていた。
姉は誰からも愛される妹に対しコンプレックスを抱いており、死んでしまえばいいのにと考えることすらあった。
だが、その翌日妹が高熱で寝込んでしまい、姉は後悔し考えを改める。
妹の熱は下がったものの、今度は母親が病気になり、亡くなってしまう。
母親が亡くなったことで、姉は働きに出るようになる。
そんな姉に対し、村の男たちは優しく接してくれたが、村の女たちはなぜか冷たくなっていった。
ある日妹の妊娠が発覚し、それが原因で妹は火炙りにされてしまう。
妹が殺されたことに姉は激怒し、復讐として村人を全員焼き殺してしまう。


妹だが、先天的になんらかの障害を抱えている可能性がある。
身体的なものか精神的なものかは分からないが、「神に愛されたから生まれつき幸福だった」、「一人では何も出来ない可愛い天使」という歌詞からそれが窺える。
少なくとも、精神的な障害については確定だろう。
理由は後述。

妹が妊娠した原因は、おそらく村の男たちにある。
妊娠発覚時、男たちは口を噤んだ。
その理由は、その件についてなんらかの後ろめたいことを知っているからだろう。
単純に考えれば、男たちが妹の体を弄んだ結果、妹は妊娠してしまった、と思われる。
姉に対して男たちが優しく接していたのにも、少なからずこの件の影響があるのだろう。

妹が精神的な障害を抱えていると考える理由はここにある。
そのために、妹は自分が男たちに何をされているのか、正確に認識できなかったのだ。

村の女たちも、妹の妊娠が発覚する前から感付いていたはずだ。
だから、姉に対して冷たくなっていったのだ。
感付いてはいたものの、姉妹の境遇を考慮して納得はしていないだろうが黙認していた。
しかし、妊娠発覚という形で公になってしまっては、もう黙認することもできない。
主に女たちが、怨恨から妹を私刑にしたように見えるかもしれない。
だが実際には、そうせざるを得なくなった、という方が正しいのではないだろうか。
村の秩序のために、妹は文字通り犠牲にされたわけである。

そう考えると、妹を火炙りにすることに断腸の思いだった女たちもいるのではないだろうか。
無論、全員ではないだろうが。

ちなみにだが、妹が障害を抱えていない可能性も否定はできない。
逆に頭脳が優れすぎていた、という方向性だ。
幼い頃から、その方がうまく立ち回れるという判断から精神障害を装っていた。
村の男たちに対しても、姉を助けるという目的のために、無知を装い体を売っていた、というわけである。
この方向性でもとりあえず成り立ちそうだが、確定できる情報はないのでこれ以上はやめておく。
どちらでも、それほど大きな差はないはずだし。


姉の方にはほとんど触れなかったが、まぁいいか。
仮面の男はこの姉のどこにエルの面影を見たのか。
姉のしたことと言えば、妹のことを盲目的に信じ、復讐のために大量殺戮をした、くらいだが。
前者は多少エルと被る部分があるが、後者は似ても似つかない。

Arkと同じく、話の流れのまとめに似たセリフを書いているので、もうお気付きかもしれない。
Sacrificeについても、決定打はセリフにある。

「この世は所詮楽園の代用品でしかないのなら、罪深き者は全て等しく灰に還るがいい」

重要なポイントは前半である。
この世が、楽園の代用品でしかない。
姉がどのような知識を持っているのかは全く分からないため、このセリフの意図は不明である。
しかし、エルがこのセリフを発する可能性は高い。
エルにとっては死後の世界、エルにとっての楽園こそが本物。
この世は所詮、その代用品に過ぎないのだから。

似たセリフを、死の間際楽園に関する話をしている最中に発していたとしたら。
仮面の男がSacrificeの姉にエルの面影を見ても無理はないだろう。


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